革小物を決めきれない時期が、ずいぶん長く続いていました。ペガサスを隠さないカードケースを探した記録も、カードケースの相性について考えた記録も、結論は出ないまま終わっています。どちらもまだ探している途中です。

決まったのは、そちらではなく名刺入れのほうでした。

名刺入れは、使う回数より見られる回数で決まる

名刺入れは、持っている時間のほとんどが鞄の中です。開くのは人と会ったときだけで、頻度だけを数えれば決して高くありません。

それでも選ぶのに時間がかかったのは、開く場面が必ず人前だからでした。相手の目の前で出して、相手の手に渡すものを一度置く。カードを店員に渡す一瞬とは、見られ方の質が違います。

使う回数が少ないから安いものでいい、という順序にはなりませんでした。回数ではなく、その一回がどういう場面かで決めることになります。

選んだのはキプリスの通しマチ名刺入れ

決めたのは、キプリスの「通しマチ名刺入れ|コードバン&ルーガショルダー」です。

コードバンは馬の臀部から取れる革で、公式の説明では繊維密度が牛革の3〜5倍あるとされています。外装にこれを使い、内側にはベルギーのタンナーによるルーガショルダーという牛革が入ります。硬質な光沢の革と、シワの表情が出る革を、外と内で分けた作りです。

通しマチというのは、底のマチが中身の量に合わせて動く構造を指します。名刺の枚数が日によって変わっても、閉じ方が変わりにくい。価格は30,800円(税込)、日本製です。

手元にあるのは、外側のコードバンがブラック、内側のルーガショルダーがレッドの個体です。公式で現在選べるのはブラック、ワイン、グリーンをそれぞれ内外で揃えた3通りなので、この組み合わせは現行のラインナップにありません。型と革の構成は同じ、色だけが違う一点ということになります。

数字と素材の細かい話は、monomalife 側の記事に寄せました。ここでは、なぜこれを選んだのかという側だけ書きます。

ビジネス用の名刺入れを新しくしたい、という気持ちは前からありました。名刺交換の機会が増えたからではありません。そこはむしろ変わっていなくて、単に手元のものを替えたかっただけです。

選んだ理由のほうも、条件を一つずつ潰していった先にあったわけではありません。この2種類の革が組み合わさっているのを見て、そこで決めていました。

長く決められずにいたわりに、決まるときは早かったということです。カードケースのほうを何年も選べずにいるのは、条件が多すぎて優先順位がつかないからでした。名刺入れは、条件を並べる前に反応するものが先に来た。

理屈が後から追いついてくる買い方は、あまり褒められたものではないかもしれません。ただ、長く探していたものほど、決まるときは理屈ではないというのは、何度か経験しています。

カードと同じ基準で革小物を選ぶようになった

振り返ると、名刺入れの選び方は、カードの持ち方を考えていたときの基準とほとんど同じでした。

年会費をどう考えるかを書いたときも、メンバーズセレクションで何を選ぶかを書いたときも、最後に残った基準は「生活に残るかどうか」でした。金額に換算して得かどうかで決めると、選んだあとの満足が続きません。

名刺入れも同じところに戻ってきました。1回あたりいくらで割り算を始めると、この価格は正当化できません。割り算をやめて、開いた一瞬に納得できるかどうかで決めています。

同じ基準を別の場所に当てはめただけ、と言えばそれまでです。ただ、カードの持ち方で身についた考え方が、革小物の選び方にそのまま効いているのは、自分でも少し意外でした。

カードケースのほうは、まだ決まっていない

名刺入れが決まっても、カードケース探しは終わっていません。

ペガサスを隠さずにカードを守る、という条件は今も満たせていないままです。名刺入れとカードケースは、求めるものが違いました。名刺入れは人に見せる前提で選べますが、カードケースは守ることと見せることが正面から衝突します。

片方が決まったことで、もう片方の条件がはっきりしたところはあります。名刺入れで納得できた基準を、そのままカードケースに持っていけるとは限らない。そこは分けて考えることになりそうです。

長く探しているもののうち、片方だけが先に決まる。生活の記録としては、その順序自体が残っていればいいのだと思っています。全部が揃った状態で書けることなど、そもそもあまりありません。